東京地方裁判所 昭和62年(ワ)7052号 判決
一 請求の原因1(一)の事実(原告ウインドサーフインが本件特許権を有していたこと)は、成立に争いのない(本件においては、甲号各証及び乙号各証は、いずれも成立又は原本の存在及び成立について当事者間に争いがないので、以下書証の成立の真正についての摘示を省略する。)甲第一号証(特許登録原簿記録事項証明書)により、これを認めることができ、また、同1(二)の事実(原告勝和機工の実施権)については、右甲第一号証によれば、原告勝和機工は、本件特許権について、原告ウインドサーフインから、昭和四九年八月二〇日、地域を日本国全域、期間を同日から一〇年間とする専用実施権の設定を受け、昭和五六年三月二七日にその登録がされたこと、その後、昭和五九年八月二〇日、地域を日本国全域、期間を同日から特許権存続期間満了(昭和六一年五月三一日)までとする専用実施権の設定を受け、昭和六一年一月二七日にその登録がされたことが認められる。
二 請求の原因2の事実(本件明細書の特許請求の範囲の記載)は当事者間に争いがなく、右争いのない事実と甲第二号証(本件訂正公報)によれば、本件発明の構成要件は、請求の原因4(一)(1)のとおりであると認められる。
三 請求の原因3の事実(被告による被告製品の販売)のうち、被告が別紙目録商品名一覧表一記載の商品名のセイリングボードを販売したこと、同目録商品名一覧表二記載の商品名のボード中、被告主張の商品名のボードを販売したことは、当事者間に争いがない。
四 そこで、仮に被告製品が別紙目録記載のとおりのものであるとして、被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか否かについて判断する。
1 被告製品が本件発明の構成要件A及びBを充足することは当事者間に争いがない。原告らは、本件発明の構成要件Cの「ユニバーサルジヨイント」は、本件明細書の特許請求の範囲において、「該ブームをにぎる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結するユニバーサルジヨイント」と定義され、発明の詳細な説明の項においても、特定の実施例において「三個の回転軸線を備えた接手、又は使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」と定義されているものであるから、被告製品のゴム・ジヨイントKは本件発明のユニバーサルジヨイントに該当し、したがつて、被告製品は、本件発明の構成要件Cを充足する旨主張し、これに対して、被告は、本件発明のユニバーサルジヨイントとは、実施例に示されているようないわゆる機械的構造の継手を意味するから、被告製造のゴム・ジヨイントKはこれに該当せず、したがつて、被告製品は、右構成要件Cを充足しない旨主張するので、この点について審案する。
2 甲第二号証によれば、次の各事実を認定することができる。
(一) 本件明細書において「ユニバーサルジヨイント」の語が使用されている箇所としては、まず、特許請求の範囲の項において、「……該ブームをにぎる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結するユニバーサルジヨイントとを備えることを特徴とする、風力推進装置。」(五頁右欄一七行ないし二一行。本件訂正公報における頁行を示す。この項において以下同じ。)との記載があるほか、発明の詳細な説明の項において、(1)「本発明は、使用者を支持する本体装置である波乗り板と、推進力として風を受け入れる風力推進手段とを含み、該風力推進手段が、円柱と、該円柱に長い端縁部で取付けられた帆と、前記円柱の横方向に配置され、前記円柱及び帆を間に入れて互に連結され且つ一端で前記円柱にまた他端で前記帆の帆耳にそれぞれ連結された一対のブームと、該ブームをにぎる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結するユニバーサルジヨイントとを備えることを特徴とする、風力推進装置を提供する。」(三頁右欄一行ないし一二行)、(2)「特定の実施例において、ユニバーサルジヨイント例えば三個の回転軸線を備えた接手、又は使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手によつて波乗り板に風力推進手段の円柱が連結されている。」(三頁右欄一三行ないし一七行)、(3)「第1図を参照すれば使用者を支持する波乗り板10と、推進力として風を受け入れる風力推進手段であつて円柱12と三角形の帆14と一対のブーム16、18と円柱12を波乗り板10に回転及び起伏自在に連結する三軸線ユニバーサルジヨイント36とを備える風力推進手段とを包含する風力推進装置が図示されている。」(三頁右欄三三行ないし四頁左欄三行)、(4)「第2図を参照すれば円柱12が三軸線ユニバーサルジヨイント36によつて前記台29に連結されている。前記ジヨイント36は全体を不銹銅で作り且つ木ねじ37によつてベース27の両側に保持されている締め板38、40によつて円柱12に取付けられている。」(四頁左欄二〇行ないし二五行)、(5)「操作時に、使用者は円柱12をユニバーサルジヨイント36にて取付けてある位置の背後において波乗り板10の上面28に立ち、一方のブーム16又は18をにぎる。」(四頁右欄四四行ないし五頁左欄二行)、(6)「本発明によれば、風力推進手段をそのユニバーサルジヨイントを介して回転及び起伏自在に波乗り板に連結したことにより、突風又は激風時に風力推進手段のブームから手を離せば、該風力推進手段はその帆に風を受けない方向へ倒れ、波乗り板を安定させ、その転ぷくを防ぐことができる。」(五頁右欄四行ないし九行)との各記載があり、また、図面の簡単な説明の項において、第2図の説明として、「第2図は第1図の線2―2における帆の回転及び起伏に使用するユニバーサルジヨイントの断面図」(一頁左欄二行ないし四行)との記載がある。図面としては、風力推進装置の外観図である第1図(六頁)中に三軸線ユニバーサルジヨイント36が記載されているが、同図ではその構造は不明であり、第2図(五頁)は、三軸線ユニバーサルジヨイントの断面図であつて、その詳細な構造を明らかにしている。
(二) 本件明細書において、「ユニバーサルジヨイント」として具体的にその構造が示されているものは、実施例である三軸線ユニバーサルジヨイントのみであつて、その構造については、願書添付の図面に記載されており(本件訂正公報五頁第2図)、また、その説明として、発明の詳細な説明の項において、「第2図を参照すれば円柱12が三軸線ユニバーサルジヨイント36によつて前記台29に連結されている。前記ジヨイント36は全体を不銹銅で作り且つ木ねじ37によつてベース27の両側に保持されている締め板38、40によつて円柱12に取付けられている。前記締め板38、40はベース27の幾分下までの延長部42、44を備えている。この延長部42、44は不銹鋼製管46の短い区画の両側に配置されている。1/4インチ(六・三mm)直径の頭付きピン48が前記締め板の延長部42、44の孔50、52の中をのび、頭付きピン48のコツタ孔56に挿入されたコツタピン54によつて回転自在に取付けられている。不銹鋼の板で作つたクレビス58が、その側面60(その中の一つだけを図示してある)を締め板の延長部42、44の下に横方向になるよう、管46上に配置されている。1/4インチ(六・三mm)直径の頭付きピン62(第2図に断面で示す)がクレビスの側面と管46の孔64を貫通しており且つ頭付きピン62のコツタ孔に入つたコツタピン(図示せず)によつて回転自在に取付けられている。前記頭付きピン48、62は相互に直交する水平の回転軸を構成し、ベース27は各回転軸のまわりに回転することができ、従つて、ベース27に取付けられた円柱12を各回転軸のまわりに回転させ、波乗り板10で起伏させることができる。長さ3インチ(七六・二mm)、直径1/4インチ(六・三mm)の丸頭のねじ68がクレビス58のベース71の孔70を通りそこから座金72をその下の台29のほぞ孔78に入つているナツト74とロツクナツト76を通り、これによつてクレビス58をダガボート20に回転自在に取付けてある。ねじ68がクレビス58のベースを充分な遊びをおいて保持し、クレビス58を座金72に接触して回転可能としている。前記ねじ68は垂直の回転軸を構成し、ベース27はこの回転軸のまわりに回転することができ、従つて、ベース27に取付けられた円柱12をこの回転軸のまわりに波乗り板10で回転させることができる。」(本件訂正公報四頁左欄二〇行ないし同頁右欄一五行)と記載されている。
3 右認定の事実によれば、本件明細書の特許請求の範囲の項には、「該ブームをにぎる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結するユニバーサルジヨイント」との記載があるところ、原告らは、右記載をもつて本件発明における「ユニバーサルジヨイント」の構成が定義されていると主張する。しかし、右記載は、「ユニバーサルジヨイント」の作用ないしは機能を説明したにすぎないものであつて、これがいかなる構造のものであるか、その構成については何ら説明するものではない。
次に、発明の詳細な説明の項においては、まず、右同様の記載(前記2の認定事実(一)中の(1)の記載)があるが、この記載が「ユニバーサルジヨイント」の構成を何ら説明するものではないことは、既に述べたのと同様である。このほかに、「特定の実施例において、ユニバーサルジヨイント例えば三個の回転軸線を備えた接手、又は使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手によつて波乗り板に風力推進手段の円柱が連結されている。」との記載(同(2)の記載)があり、右記載について、原告らは、「ユニバーサルジヨイント」が「三個の回転軸線を備えた接手」のほか、「使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」のすべてを含むことを指称しているものである旨主張し、これに対して、被告は、右記載は、実施例として「ユニバーサルジヨイント例えば三個の回転軸線を備えた接手」と「使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」との二種類の継手があることを示しているものであり、「ユニバーサルジヨイント」は、このうち前者を意味するものであると主張する。右記載において示された「ユニバーサルジヨイント」の実施例がいかなる範囲のものを指すかについての判断はしばらくおくとしても、仮に原告ら主張のように「三個の回転軸線を備えた接手、又は使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」というのが「ユニバーサルジヨイント」の特定の実施例であるとしたところで、右記載からは、「ユニバーサルジヨイント」の実施例として「三個の回転軸線を備えた接手」、すなわち、いわゆる三軸線ユニバーサルジヨイント(その構造については、前認定のとおり、発明の詳細な説明の項及び図面において明らかにされている。)が含まれることは明らかとなるものの、「又は使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」については、その作用ないしは機能を述べるだけで、具体的にどのような構成のものがこれに当たるかは一切明らかでない(前認定のとおり、本件明細書においては、三軸線ユニバーサルジヨイントのほかには具体的な構成を明らかにする記載は、一切存在しない。)。また、「風力推進手段をそのユニバーサルジヨイントを介して回転及び起伏自在に波乗り板に連結したことにより、」との記載(同(6)の記載)についても、同様に、この記載によつては、「ユニバーサルジヨイント」の作用ないしは機能は明らかとされているが、その構成は一切明らかでない。発明の詳細な説明の項におけるその余の「ユニバーサルジヨイント」の記載(同(3)、(4)、(5)の各記載)は、いずれも特定の実施例である三軸線ユニバーサルジヨイントの構造を説明するものである。
また、図面の簡単な説明の項において、第2図の説明として、「ユニバーサルジヨイント」の語は用いられているものの、第2図においてその構造が示されているのは、特定の実施例である三軸線ユニバーサルジヨイントである。
そして、前認定のとおり、本件明細書において「ユニバーサルジヨイント」の語が使用されている箇所は以上ですべてであつて、また、「ユニバーサルジヨイント」の実施例についても、特定の実施例である三軸線ユニバーサルジヨイントの構造が明らかにされているだけであつて、それ以外の継手について、その構造を明らかとするような説明文も図面も一切存在しない。
以上のとおり、本件明細書において用いられている「ユニバーサルジヨイント」の語については、右に認定した以上に、右明細書上においてその内容ないし構造が説明あるいは図面によつて明らかにされているものとはいえない。
なお、乙第一号証の一ないし三、第二号証の一ないし三、第六号証の一ないし三によれば、社団法人日本機械学会の昭和五二年七月一五日発行の「機械工学便覧改訂第六版」には、「自在軸継手」について「二軸の交わる角が自由に変化しても回転を伝える軸継手を自在軸継手といい、不等速形と等速形の種類がある」と記載されていること、同社団法人の昭和四六年五月一五日発行の「機械図集 軸継手」には、「自在軸継手」について「自在軸継手は、交さする二軸を結合する軸継手で、スブラインなどのしゆう動軸を併用すれば、軸継手の曲折角が変化しても回転を伝えることができる、駆動軸と被動軸の角速度比が一回転中に変わる不等速形と、変わらない等速形がある、」と記載されていること、日刊工業新聞社の昭和四九年四月三〇日発行の「機械設計便覧(新版)」には、「交差軸継手」について「一平面内にあつて傾いたままの状態で回転する二軸間の伝動に用いられる軸継手であつて、自在継手(ユニバーサルジヨイントuniversal joint)とも呼ばれ、次の二形式である、(1)クロスジヨイント交差軸継手、(2)等速交差軸継手」と記載されていることが認められ、他方、甲第二号証によれば、本件発明における「ユニバーサルジヨイント」は、動力の伝達を目的とするものではなく、連結された円柱と波乗り板との間に回転を伝達しないものであつて、本件発明における「ユニバーサルジヨイント」の実施例として本件明細書に記載された三軸線ユニバーサルジヨイント36は、頭付きピン48により円柱12と管46とを連結し、頭付きピン48と直交する頭付きピン62により管46とクレビス58とを連結し、更にこれを丸頭のねじ68により回転可能に波乗り板10に取り付けたものであつて、円柱12とクレビス58との関係では自在継手と同様の構造であるが、円柱12と波乗り板10との関係では回転可能な丸頭のねじ68が存在することから回転を伝達しない構造となつていることが認められ、以上認定の事実によれば、機械工学上の用語としては、「universal joint」の語は、一般に、「自在軸継手」と同義であつて、一直線上になく、ある角度で交わる、接続された二軸間において、一方の軸の回転を他方の軸に伝える装置を意味するものであり、これに対して、本件発明における「ユニバーサルジヨイント」が動力を伝達することなく円柱と波乗り板とを連結する機能を有するものである点に照らし、両者は、その意味において技術的に異なるものというべきである。したがつて、本件明細書における「ユニバーサルジヨイント」の語は、その有する普通の意味としての、機械工学上の用語として使用されているということもできない。
以上によれば、本件明細書においては、特許請求の範囲はもちろん、発明の詳細な説明の項及び図面を子細に検討しても、「ユニバーサルジヨイント」については、風力推進手段を回転及び起伏自在に波乗り板に連結する作用ないしは機能を有するものであることが明らかにされているだけであつて、その構成については、その実施例として、唯一、三軸線ユニバーサルジヨイントの構造が説明及び図面によつて示されているにすぎない。
4 そして、他方、被告製品は、本体装置(ボード部)aとマストCとがゴム・ジヨイントKによつて連結されており、ゴム・ジヨイントKの構造は、別紙目録第4図及び図面の説明の項並びに同目録二風力推進装置(セイリングボード)の構造の項2、4記載のとおりである。
5 そこで、被告製品におけるゴム・ジヨイントKを本件明細書において「ユニバーサルジヨイント」の実施例としてその構造が明らかにされている三軸線ユニバーサルジヨイントと比較すると、右三軸線ユニバーサルジヨイントは、前認定(前記2(二)記載)のとおり、頭付きピン48により円柱12と管46とを連結し、頭付きピン48と直交する頭付きピン62により管46とクレビス58とを連結し、更にこれを丸頭のねじ68により回転可能に波乗り板10に取り付ける方法により風力推進手段と波乗り板を連結するものであつて、頭付きピン48と頭付きピン62は相互に直交する水平の回転軸を構成し、円柱12を各回転軸のまわりに回転可能とすることを通じて、波乗り板10上で起伏させることを可能としているが、他方、被告製品のゴム・ジヨイントKは、全体に三つの部分、すなわち、上方部分であるマスト受部K1と、中間部分であるゴム製屈曲部K2と、下方部分であるボード結合部K3とからなり、マスト受部K1は、ゴム製屈曲部K2に対して中心軸線(ピンq)の周りに回転することができるように連結されているものであつて、ゴム製屈曲部の材質自体の特性である弾性を利用することによつて前後左右の方向への屈曲傾斜を可能としているものであり、前記三軸線ユニバーサルジヨイントにおける相互に直交する水平の二軸に相当する構造は存在しない。右によれば、被告製品におけるゴム・ジヨイントKと本件明細書における三軸線ユニバーサルジヨイントとでは、風力推進手段を本体装置上で起伏自在とする構成において、技術的思想を異にするものというべきである。
6 そして、前述のとおり、本件発明における「ユニバーサルジヨイント」について、本件明細書においてその構成が明らかにされているのは、特定の実施例である三軸線ユニバーサルジヨイントだけであることからすれば、少なくとも、被告製品におけるゴム・ジヨイントKのように、構成部材の材質の弾性を利用することによつて前後左右の方向への屈曲傾斜を可能とする構造については、本件明細書においてその技術事項の開示があるものと認めることができない。
したがつて、被告製品のゴム・ジヨイントKは、本件発明の構成要件Cの「ユニバーサルジヨイント」に該当するものとはいえない。
7 このことは、次の点からも明らかである。
すなわち、甲第三号証によれば、当初の明細書の特許請求の範囲の項には、「1使用者を支持するようになつた本体装置と、前記本体装置と旋回可能に協働し且つ推進力として風を受け入れるようになつた風力推進装置とを包含し、前記推進装置の位置が前記使用者によつて制御でき、前記推進装置が使用者の不在のとき旋回防止力を失うことを特徴とする風力推進装置。」(本件公報三頁6欄一四行ないし一九行)と記載されていて、「ユニバーサルジヨイント」の語は用いられておらず、発明の詳細な説明の項には、前記2の認定事実(一)の(2)とほぼ同一の後記記載(同一頁2欄二五行ないし二九行)、同(4)と同一の記載(同二頁3欄三八行ないし四三行)及び同(5)と同一の記載(同三頁5欄五行ないし八行)はあるものの、同(1)、(3)及び(6)に対応する記載はいずれもなく、他に「ユニバーサルジヨイント」の語を用いた記載はない。図面の簡単な説明の項には前記2の認定事実(一)とほぼ同一の記載(同一項1欄二〇行ないし二二行)があり、願書添付の図面についても、同(一)と同一の図面であることが認められる。
右のとおり、当初の明細書においては、特許請求の範囲の項に「ユニバーサルジヨイント」の語はなく、また、前記2の認定事実(一)の(4)及び(5)と同一の記載中の「ユニバーサルジヨイント」は、いずれも特定の実施例である三軸線ユニバーサルジヨイントを意味するものである。したがつて、特定の実施例である三軸線ユニバーサルジヨイントを離れての「ユニバーサルジヨイント」の語は、前記2の認定事実(一)の(2)とほぼ同一の記載である「特定の実施例において、ユニバーサルジヨイント例えば三個の回転軸線を備えた接手、又は使用者が操作しないとき推進装置を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手によつて乗物本体に前記推進装置が連結されている。」との記載部分だけに存在することになる。そこで、右部分において「ユニバーサルジヨイント」の語の意味する内容を検討するに、まず、右記載中の、「三個の回転軸線を備えた接手」と「使用者が操作しないとき推進装置を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」との関係については、後者は具体的な構造を離れて抽象的な作用ないしは機能を説明する記載であつて、その意味する範囲は広範であり、前者も包含するものである。このように、「三個の回転軸線を備えた接手」が「使用者が操作しないとき推進装置を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」に包含される関係にある以上、両者が、共に「ユニバーサルジヨイント」の例示として、接続詞「又は」によつて結ばれる並列的な関係に立つものと解することはできない。そして、前記のような両者の内容的な関係にかんがみれば、通常の用語法としては、むしろ、「ユニバーサルジヨイント」の例示としては「三個の回転軸線を備えた接手」のみであつて、「ユニバーサルジヨイント例えば三個の回転軸線を備えた接手」と、それ以外の「使用者が操作しないとき推進装置を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」とが、接続詞「又は」によつて並列的に結ばれているものと解するのが相当である。そうであれば、当初の明細書においては、「ユニバーサルジヨイント」について、その例示として「三個の回転軸線を備えた接手」、すなわち、三軸線ユニバーサルジヨイントが挙げられているだけであつて、「ユニバーサルジヨイント」以外にも「使用者が操作しないとき推進装置を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」が存在することになる。右のとおり、「ユニバーサルジヨイント」は、「使用者が操作しないとき推進装置を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」のすべてではなく、そのうちの一部を指すものである以上、その意味する範囲は、例示されている唯一の例である三軸線ユニバーサルジヨイントないしはせいぜいこれに類する構造のもの、すなわち、相互に直交する水平の二軸のまわりの自由回転により起伏を自在とする機械的構造のものを意味するものというべきである。
そして、当初の明細書の特許請求の範囲の項の記載は、前記のとおりであつて、そこでは風力推進装置と本体装置とを連結する継手については何ら触れられていないから、右記載からは、継手として「ユニバーサルジヨイント」を用いたものであつても、それ以外のものを用いた場合であつても、特許請求の範囲に含まれ得ることになる。
当初の明細書における「ユニバーサルジヨイント」の意味が右のようなものである以上、昭和五八年七月二七日付訂正審判請求に基づく訂正後の本件明細書においても、「ユニバーサルジヨイント」の語は、他に特段の事情のない限り、右と同一の内容を意味するものとして理解すべきものというべきである。そして、本件明細書において、「ユニバーサルジヨイント」の語について、その内容を定義した記載が新たに加えられたような事情のないことは、既に認定した事実により明らかであるから、結局、本件明細書における「ユニバーサルジヨイント」の語は、当初の明細書におけるのと同様、三軸線ユニバーサルジヨイントないしはせいぜいこれに類する構造のもの、すなわち、相互に直交する水平の二軸のまわりの自由回転により起伏を自在とする機械的構造のものを意味するものというべきである。
したがつて、前記訂正において、「ユニバーサルジヨイント」の語を特許請求の範囲に持ち込むことにより、風力推進手段と本体装置とを連結する手段の構造をも構成要件の一つとした本件発明は、訂正前の当初の明細書における特許請求の範囲を減縮したものというべきであり、連結手段として、「使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」のうち前記のような「ユニバーサルジヨイント」を用いているものだけが、特許請求の範囲に含まれるものというべきである。
そして、被告製品において風力推進手段と本体装置とを連結しているゴム・ジヨイントKが、三軸線ユニバーサルジヨイントないしはこれに類する構造のもの、すなわち、相互に直交する水平の二軸のまわりの自由回転により起伏を自在とする機械的構造のものに該当しないことは、前述のとおりであるから、被告製品は、本件発明における「ユニバーサルジヨイント」を備えるものとはいえないことになる。
8 右に述べたところは、本件発明の出願経過及び訂正審判の経過をみるとき、一層明らかとなる。
すなわち、甲第一ないし第三号証、乙第三、第七号証によれば、次の各事実を認定することができる(この認定を左右するに足りる証拠はない。)。
(一) 昭和四四年三月一一日の本件発明の特許出願の願書に最初に添付した明細書(当初の明細書)の特許請求の範囲の項の記載は、「1使用者を支持するようになつた本体装置と、前記本体装置と旋回可能に協働し且つ推進力として風を受け入れるようになつた風力推進装置とを包含し、前記推進装置の位置が前記使用者によつて制御でき、前記推進装置が使用者の不在のとき旋回防止力を失うことを特徴とする風力推進装置。」(本件公報三頁6欄一四行ないし一九行)というものであり、同明細書の発明の詳細な説明の項及び願書添付の図面の記載の内容は、前記7において認定したとおりである。
(二) 本件特許権が昭和四七年一月一一日に登録された後の、昭和五五年一〇月一一日に株式会社プロは、本件特許権について無効審判請求をした(昭和五五年審判第一八八一四号。プロ事件)。
(三) 右プロ事件の無効審判請求の後である、昭和五七年二月二六日に原告ウインドサーフインは、本件特許権につき最初の訂正審判請求(昭和五七年審判第三三二〇号。第一次訂正審判請求)をしたが、その内容は、特許請求の範囲の項の記載を、「使用者を支持するようになつた本体装置と、前記本体装置と旋回可能に協働し、且つ推進力として風を受け入れるようになつた風力推進手段とを包含し、前記風力推進手段は、本体装置に枢着した円柱と、前記円柱を本体装置に連結し、且つ使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にする継手と、帆および帆をピンと張るため円柱上に横方向に取付け、手で保持するようになつたアーチ状に連結される一対のブームを包含し、前記風力推進手段の位置が使用者によつて制御でき、前記風力推進手段が使用者不在のとき旋回防止力を失うことを特徴とする風力推進装置。」と訂正するというもので、当初の明細書の発明の詳細な説明の項及び願書添付の図面の記載については何らの訂正も請求していない。
(四) 原告ウインドサーフインは、昭和五八年七月二七日、前記第一次訂正審判請求を取り下げ、同日、新たな訂正審判請求(昭和五八年審判第一六五七七号。第二次訂正審判請求)をしたが、その内容は、当初の明細書の特許請求の範囲の項の記載を、本件明細書記載のとおりの「1使用者を支持する本体装置である波乗り板と、推進力として風を受け入れる風力推進手段とを含み、該風力推進手段が、円柱と、該円柱に長い端縁部で取付けられた帆と、前記円柱の横方向に配置され、前記円柱及び帆を間に入れて互に連結され且つ一端で前記円柱にまた他端で前記帆の帆耳にそれぞれ連結された一対のブームと、該ブームをにぎる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結するユニバーサルジヨイントとを備えることを特徴とする、風力推進装置。」(本件訂正公報五頁右欄一一行ないし二一行)と訂正し、発明の詳細な説明の項の記載についても、本件明細書記載のとおりの内容に訂正するというものであつた(図面についての訂正は請求していない。)。
そして、右第二次訂正審判請求の訂正審判請求書において、原告ウインドサーフインは、右の特許請求の範囲の項の記載の訂正は、「下記理由により、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とする」(同訂正審判請求書一一頁一七行ないし一八行)ものであるとしたうえ、「c)さらに、上記風力推進手段について、その構成が原本の発明の詳細な説明の欄において実施例として記載されかつ添付図面に示されたとおりの「円柱と、該円柱に長い端縁部で取付けられた帆と、前記円柱の横方向に配置され、前記円柱及び帆を間に入れて互に連結され且つ一端で前記円柱にまた他端で前記帆の帆耳にそれぞれ連結された一対のブーム、と該ブームをにぎる使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結するユニバーサルジヨイントとを備える」ものであることを特許請求の範囲の記載中で明らかにすることは、(原本の特許請求の範囲に風力推進装置として記載されていた)上記風力推進手段の構成を限定するものであり、この限定は特許請求の範囲の減縮に該る。
d)乗物の一例として波乗り板が含まれること、及び風力推進手段が円柱、帆、一対のブームおよびユニバーサルジヨイントを備えることは、原本の発明の詳細な説明の欄に記載され、また、添付図面を参照しての実施例の説明に示されており、従つて、本体装置及び風力推進手段を上記のように限定することは、原本の特許請求の範囲に記載されていた構成事項を、原本の発明の詳細な説明の欄に記載されていた事項に又はその事項により特定するものであると共に、これによる特許請求の範囲の訂正の前後において発明の目的は同一であるから、上記訂正による特許請求の範囲の減縮は、特許請求の範囲の実質変更には該らない」(同訂正審判請求書一四頁二行ないし一五頁一〇行)から、右訂正は、「特許請求の範囲における明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とし、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない」(同訂正審判請求書一五頁一一行ないし一四行)と主張している。更に、当初の明細書の発明の詳細な説明の項の記載の訂正に関しても、「使用者を支持するようになつた乗物の本体装置と、前記本体装置と旋回自在に協動して風を推進力として受け入れるようになつた風力推進装置を包含する風力推進機を提供する。前記風力推進装置の位置は使用者によつて制御することができ且つこのような制御を行わないとき旋回抵抗力が殆んどなくなる。」(本件公報一頁2欄一八行ないし二四行)を「本発明は、使用者を支持する本体装置である波乗り板と、推進力として風を受け入れる風力推進手段とを含み、該風力推進手段が、円柱と、該円柱に長い端縁部で取付けられた帆と、前記円柱の横方向に配置され、前記円柱及び帆を間に入れて互に連結され且つ一端で前記円柱にまた他端で前記帆の帆耳にそれぞれ連結された一対のブームと、該ブームをにぎる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結するユニバーサルジヨイントとを備えることを特徴とする、風力推進装置を提供する。」(本件訂正公報三頁右欄一行ないし一二行)とする訂正につき、右「訂正は、本発明が提供するのは訂正後の特許請求の範囲に記載された構成による風力推進装置であるところ、原本の記載のままでは対応関係が不明瞭であるので、これを明瞭にするものである。よつて、この訂正は特許請求の範囲の減縮と明瞭でない記載の釈明とを目的とする。」(同訂正審判請求書二一頁一〇行ないし一五行)と主張し、「波乗り板10と円柱12と三角形の帆14とブーム16、18」(本件公報二頁3欄一九行ないし二〇行)を「使用者を支持する波乗り板10と、推進力として風を受け入れる風力推進手段であつて円柱12と三角形の帆14と一対のブーム16、18と円柱12を波乗り板10に回転及び起伏自在に連結する三軸線ユニバーサルジヨイント36とを備える風力推進手段とを」(本件訂正公報三頁右欄三三行ないし四頁左欄二行)とする訂正につき、右「訂正は、訂正後の特許請求の範囲に記載された事項により構成される風力推進装置は実施例に記載の構造を備える風力推進装置であるところ、その対応関係が原本の記載では不明瞭であるので、これを明瞭にするものである。よつて、この訂正は特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする。」(同訂正審判請求書二三頁一六行ないし二四頁二行)と主張し、「取付けられている。」(本件公報二頁4欄一三行ないし一四行)の次に「前記頭付きピン48、62は相互に直交する水平の回転軸を構成し、ベース27は各回転軸のまわりに回転することができ、従つて、ベース27に取付けられた円柱12を各回転軸のまわりに回転させ、波乗り板10で起伏させることができる。」(本件訂正公報四頁左欄四二行ないし同頁右欄二行)を加え、「回転可能にしている。」(本件公報二頁4欄二二行ないし二三行)の次に「前記ねじ68は垂直の回転軸を構成し、ベース27はこの回転軸のまわりに回転することができ、従つて、ベース27に取付けられた円柱12をこの回転軸のまわりに波乗り板10で回転させることができる。」(本件訂正公報四頁右欄一一行ないし一五行)を加えることは、「それぞれ、訂正後の特許請求の範囲に記載された風力推進装置を構成する風力推進手段の円柱がユニバーサルジヨイントにより波乗り板に連結されることにより、帆が波乗り板上で起伏と回転とを自在とするが、実施例に記載の風力推進装置の構造によれば如何にして帆がそれらを自在にするかにつき理由を明らかにすべきところ、これがされていない原本の記載では不明瞭であるので、これを明瞭にするものである。よつて、これらの訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする。」(同訂正審判請求書二五頁三行ないし一三行)と主張している。
(五) その後プロ事件について、昭和六〇年八月一二日、請求人株式会社プロは、右無効審判請求を取り下げた。
(六) そして、原告ウインドサーフインの右第二次訂正審判請求が認められて、昭和六〇年一一月二〇日、訂正審決がされた。右訂正審決によつて訂正された明細書が、本件明細書である。
右認定の事実によれば、原告ウインドサーフインがした第一次訂正審判請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の項においては、本件装置と風力推進手段に含まれる円柱との連結手段として、「前記円柱を本体装置に連結し、且つ使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にする継手」の語が用いられている。そして、発明の詳細な説明の項については、本件公報の記載と同一の記載について何らの訂正の請求もされていないから、右訂正明細書の発明の詳細な説明の項においても、「ユニバーサルジヨイント」の語は、特定の実施例である三軸線ユニバーサルジヨイントを意味するものを除けば、「特定の実施例において、ユニバーサルジヨイント例えば三個の回転軸線を備えた接手、又は使用者が操作しないとき推進装置を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手によつて乗物本体に前記推進装置が連結されている。」との記載部分だけに存在することになる。そして、発明の詳細な説明の項の右記部分における「ユニバーサルジヨイント」の語の意味する内容を検討するに、右記載部分における「三個の回転軸線を備えた接手」と「使用者が操作しないとき推進装置を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」の内容的な関係に照らせば、通常の用語法としては、「ユニバーサルジヨイント」の例示としては「三個の回転軸線を備えた接手」のみであつて、「ユニバーサルジヨイント例えば三個の回転軸線を備えた接手」と、それ以外の「使用者が操作しないとき推進装置を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」とが、接続詞「又は」によつて並列的に結ばれているものと解するのが相当であつて、結局、「ユニバーサルジヨイント」以外にも「使用者が操作しないとき推進装置を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」が存在するというべきである。右は、当初の明細書について既に述べたところ(前記7)と同様である。このことは、更に、第一次訂正審判請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の項において、前記のとおり「前記円柱を本体装置に連結し、且つ使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にする継手」の語が用いられていることからも明らかである。すなわち、仮に右訂正審判請求に係る訂正明細書の発明の詳細な説明の項に用いられている「ユニバーサルジヨイント」の語が、「三個の回転軸線を備えた接手、又は使用者が操作しないとき推進装置を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」をその実施例とする広い範囲の継手を意味するものであるとすれば、右訂正審判請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の記載においても、本体装置と風力推進手段に含まれる円柱との連結手段として、「ユニバーサルジヨイント」の語を用いる(例えば、「前記円柱を本体装置に連結し、且つ使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にするユニバーサルジヨイント」と記載する。)のが、むしろ当然である。しかるに、右訂正審判請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の項には、前認定のとおり、「前記円柱を本体装置に連結し、且つ使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にする継手」と記載されているのであつて、このことからしても、右訂正審判請求に係る訂正明細書の発明の詳細な説明の項における「ユニバーサルジヨイント」の語は、特許請求の範囲の項に記載された前記「継手」と一致するものではなく、むしろ、右「継手」よりも狭い範囲の継手を意味する語であると解するのが合理的である。そして、右「ユニバーサルジヨイント」については、その構成が開示されているのが、唯一、実施例である三軸線ユニバーサルジヨイントのみであることは、当初の明細書におけるのと同様であつて、結局、当初の明細書について述べたところ(前記7)と同様、右「ユニバーサルジヨイント」は、三軸線ユニバーサルジヨイントないしはせいぜいこれに類する構造のもの、すなわち、相互に直交する水平の二軸のまわりの自由回転により起伏を自在とする機械的構造のものを意味するものというべきである。
そして、原告ウインドサーフインは、その後、第一次訂正審判請求を取り下げて、第二次訂正審判請求をしたものであるところ、右第二次訂正審判請求において、特許請求の範囲の記載を「ユニバーサルジヨイント」の語を含むものに訂正し、右訂正は「明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とする」ものであると主張している。当初の明細書における「ユニバーサルジヨイント」の語及び第一次訂正審判請求に係る訂正明細書における「ユニバーサルジヨイント」の語が、前記のとおり、三軸線ユニバーサルジヨイントないしはせいぜいこれに類する相互に直交する水平の二軸のまわりの自由回転により起伏を自在とする機械的構造のものを意味するものであるから、右第二次訂正審判請求書においても、「ユニバーサルジヨイント」の語は、他に特段の事情のない限り、右と同一の内容を意味するものとして理解すべきものというべきである。そして、右訂正審判請求書において、「ユニバーサルジヨイント」の語について、その内容を定義した記載が新たに加えられたような事情のないことは、既に認定した事実により明らかであるから、結局、右訂正審判請求書における「ユニバーサルジヨイント」の語の意味するところは、当初の明細書及び第一次訂正審判請求に係る訂正明細書におけるのと同様、三軸線ユニバーサルジヨイントないしはせいぜいこれに類する相互に直交する水平の二軸のまわりの自由回転により起伏を自在とする機械的構造のものを意味するものというべきである。
したがつて、右第二次訂正審判請求に基づく訂正審決によつて、「ユニバーサルジヨイント」の語を特許請求の範囲に持ち込むことにより、風力推進手段と本体装置とを連結する手段の構造をも構成要件の一つとした本件発明は、訂正前の当初の明細書における特許請求の範囲を減縮したものであり、連結手段として、前記のような「ユニバーサルジヨイント」を用いているものだけが、特許請求の範囲に含まれるというべきである。
なお、第二次訂正審判請求書における「ユニバーサルジヨイント」の語の意味する内容を前記のように解すべきことは、原告ウインドサーフインの、右訂正審判請求書における、発明の詳細な説明の項の記載の訂正に関する主張の内容に照らしても明らかである。すなわち、前記(四)で認定のとおり、原告ウインドサーフインは、右訂正審判請求書において、発明の詳細な説明の項の記載の訂正に関し、「波乗り板10と円柱12と三角形の帆14とブーム16、18」(本件公報二頁3欄一九行ないし二〇行)を「使用者を支持する波乗り板10と、推進力として風を受け入れる風力推進手段であつて円柱12と三角形の帆14と一対のブーム16、18と円柱12を波乗り板10に回転及び起伏自在に連結する三軸線ユニバーサルジヨイント36とを備える風力推進手段とを」(本件訂正公報三頁右欄三三行ないし四頁左欄二行)とする訂正につき、右「訂正は、訂正後の特許請求の範囲に記載された事項により構成される風力推進装置は実施例に記載の構造を備える風力推進装置であるところ、その対応関係が原本の記載では不明瞭であるので、これを明瞭にするものである。よつて、この訂正は特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする。」と主張し、更に、「取付けられている。」(本件公報二頁4欄一三行ないし一四行)の次に「前記頭付きピン48、62は相互に直交する水平の回転軸を構成し、ベース27は各回転軸のまわりに回転することができ、従つて、ベース27に取付けられた円柱12を各回転軸のまわりに回転させ、波乗り板10で起伏させることができる。」(本件訂正公報四頁左欄四二行ないし同頁右欄二行)を加え、「回転可能にしている。」(本件公報二頁4欄二二行ないし二三行)の次に「前記ねじ68は垂直の回転軸を構成し、ベース27はこの回転軸のまわりに回転することができ、従つて、ベース27に取付けられた円柱12をこの回転軸のまわりに波乗り板10で回転させることができる。」(本件訂正公報四頁右欄一一行ないし一五行)を加えることは、「それぞれ、訂正後の特許請求の範囲に記載された風力推進装置を構成する風力推進手段の円柱がユニバーサルジヨイントにより波乗り板に連結されることにより、帆が波乗り板上で起伏と回転とを自在とするが、実施例に記載の風力推進装置の構造によれば如何にして帆がそれらを自在にするかにつき理由を明らかにすべきところ、これがされていない原本の記載では不明瞭であるので、これを明瞭にするものである。よつて、これらの訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする。」と主張しているのである。右のとおり、「訂正後の特許請求の範囲に記載された事項により構成される風力推進装置は実施例に記載の構造を備える風力推進装置である」と述べ、あるいは、「訂正後の特許請求の範囲に記載された……帆が波乗り板上で起伏と回転とを自在とするが、実施例に記載の風力推進装置の構造によれば如何にして帆がそれらを自在にするかにつき理由を明らかにすべきところ」と述べて、それぞれ、実施例である三軸線ユニバーサルジヨイントについての記載を付加していることからすれば、結局、原告ウインドサーフインは、特許請求の範囲における「ユニバーサルジヨイント」の作用をもたらすべき構成の開示としては、実施例である三軸線ユニバーサルジヨイントの構造がこれに該当するものとして、第二次訂正審判請求をしたものというべきである。したがつて、第二次訂正審判請求書における右記載からも、右訂正審判請求書における「ユニバーサルジヨイント」は三軸線ユニバーサルジヨイントないしはせいぜいこれに類する相互に直交する水平の二軸のまわりの自由回転により起伏を自在とする機械的構造のものを意味するものというべきである。
9 以上によれば、被告製品は、本件発明の構成要件cの「ユニバーサルジヨイント」を備えておらず、構成要件cを充足しないから、本件発明の技術的範囲に属しないものというべきである。また、被告ボード部は、ゴム・ジヨイントKを介してセイルbと連結されるものであるところ、ゴム・ジヨイントKが本件発明の「ユニバーサルジヨイント」に当たらないことは、前認定判断のとおりであるから、本件発明の風力推進装置の生産にのみ使用する物であるということはできない。
五 よつて、原告らの本訴請求は、その余の点につき判断するまでもなく、いずれも理由がないから、これを棄却することとする。